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29歳で天逝した、魂の詩人

八木重吉

現代人が忘れたもの
八木重吉


"ねがひ"
人と人とのあひだを
美しくみよう
わたしと人とのあひだをうつくしくみよう
疲れてはならない

あなたと人との間は美しいですか?そんなことは考えたこともないでしょうか。この詩は、八木重吉という、今から90年ほど前に29歳という若さで亡くなった詩人が残したものです。彼が詩を書いた期間はわずか5年ほど。存命中はたった1冊の詩集を発行したのみです。しかし、彼の残した詩はおよそ3,000ほどもあり、今も人々に愛され続けている稀有な詩人の1人です。重吉の詩は、純粋で素朴です。しかし、心の奥底に響くような、鋭さも秘めています。彼は自然を見、故郷を思い、心震わせて言葉にしています。

昨今、「空気を読めない」ことは悪いことかのようにいわれます。現代人はこうして、空気を読みながら自分の感情に蓋をし、感じたことをそのまま口に、言葉にすることができなくなったのかもしれません。そのような世界の、人と人との間は美しいでしょうか?あなたは疲れ切って、もう人とはかかわりたくないと思っているかもしれません。しかし、重吉は疲れそうな自分自身のいうのです。「疲れてはならない」と。美しくみることを、あきらめないで求め続けよう、ということでしょうか。なぜそんなことができたでしょうか。

彼は聖書のことばを知る人でした。人を愛し、人を永遠の滅びから救うために命を捨てた神の子イエス・キリストの存在を信じていました。聖書にはこんな言葉があります。

主(神)を待ち望むものは新しく力を得、鷲のように、翼を広げて上ることができる。走っても力衰えず、歩いても疲れない。(聖書・イザヤ書40章31節)

重吉は学生時代に親友を突然の病で亡くし、自らも結核という、当時は死の病とされていた病に罹りました。常に死と隣り合わせだったのです。しかし、最後の最後まで、精力的に詩を書き続けました。立ち止まり、自分を見つめるという、ある意味つらい作業を、詩を書きながら続けたのです。

"草に すわる"
わたしの まちがひだつた
わたしのまちがひだつた
こうして 草にすわれば それがわかる

立ち止まることで、みなに置いて行かれるのではないかと思いますか。今更、何も変えられない、と思っていますか。

立ち止まり、自然に身を置いたときに、気づくことは、もしかしたら、神からの問いかけなのかもしれない……。重吉の詩は、優しく語ります。

"素朴な琴"
この明るさのなかへ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美しさに耐へかね
琴はしづかに鳴りいだすだらう

あなたも明るさの中へ、一歩進み出てみませんか。あなたの人生が静かに鳴りいだすように。

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八木重吉
29歳で天逝した、魂の詩人
現代人が忘れたもの-重吉の詩からの気づき-