エリヤ:異教の預言者と対決 背信の北王国と改革を試みた南王国
イスラエル民族をエジプトから救い出し、約束の国に導き、りっぱな王国にまで建て上げた神に背いて偶像礼拝に走る民に対して、神は預言者たちを遣わし、繰り返しメッセージを伝えます。それは、罪の先にはさばきが待っているということと、罪を悔い改めて神に立ち返れ、という呼びかけでした。
偶像礼拝の中には、人身御供として子どもを殺す儀式や性的な儀式もあり、道義的、道徳的にもたいへんな問題がありました。それらの罪を捨てて神に立ち返れという預言者たちの声は、国を挙げての堕落の中では歓迎されず、預言者たちは迫害され、殺されることも珍しくありませんでした。そのような厳しい時代に重い任務を背負って働いた預言者が何人も登場しました。
450人に1人で立ち向かう
北王国の19人の王たちは、例外なく偶像礼拝を行い、イスラエルの神を無視してきましたが、中でも悪名高いのがアハブとその妻イゼベルです。特に、イスラエルの神の預言者たちを殺し、ただ土地を奪うためだけに無実の人を殺したりしたイゼベルは、英語圏では「悪女」の代名詞になるほどの獰猛な王妃でした。
このアハブとイゼベルの前に遣わされた預言者がエリヤです。エリヤは、王夫妻が召し抱えていたバアル(カナン地方の肥沃神)の預言者450人と、アシェラ(同じくカナン地方の肥沃祭儀の女神)の預言者400人を相手に、彼らの神々と、イスラエルの神と、どちらが真の神かをめぐって対決をします。
エリヤが天から火を呼び下して勝利を収め、バアルの預言者たちを殺すと、イゼベルはエリヤを殺そうとします。しかし、エリヤは神に守られてその後も活動を続け、最後は死を見ることなく、竜巻に乗せられて天に上げられました。