ハワイからの手紙 やさしい風に吹かれて-5 小夏の卒業式

私は人生の大切な節目を迎えた娘へ、この手紙を送ります。…

 

「愛する愛娘小夏へ。高校卒業おめでとう!

高校四年間、ママはあっという間に感じました。でもこの日は小夏の晴れの舞台。この特別な日をみんなに祝ってもらって感謝でしたね。

小夏は高校に入ってから急激に成績も延び、あなたが賞をとった時は本当に嬉しかった。しかし、小夏が卒業式の当日に失敗した事件には驚きました。卒業式に着るガウンにアイロンで大きな穴を開けたこと。でもあなたはそれにすばやく対応。学校と業者に問い合わせて、よく交換できるように手配したね。カイルアまで急遽ドライブして、穴の空いたガウンを交換しに行った事もママと小夏との大切な思い出となりました。

小夏は二歳になろうとしている時から双子の弟達のお姉ちゃんとなり、幼い時から自然にママのお手伝いをしてくれました。どうしてもその二人に手をとられ、あなたにはよく我慢させたと思う。小夏を見てきて、「長女というのは偉いな」とママは初めて分かりました。ママは次女だったから、どちらというと自分のしたいことをしてきたの。小夏に出逢って、ママのお姉さんのことがよく分かるようになったわ。小夏は泣き言をほとんど言わない。だから、小夏がお願いしてくるときは、ママはあなたの叫びを聴くようにしたつもり…。それでも寂しい思いさせたでしょう。小夏は人の話をよく聞くし、他人の言葉に流されることもない。しっかりとしたものを持った、魅力的で賢い女性と、ママはあなたのことをそう思っています。

ところで、高校の卒業式、日本とハワイとは随分違うのでママは驚きました。日本はクラス単位で行動するのでクラスメイトとの結束が強い。だから卒業式はそのクラスメイトとの「別れ」を意味する。想い出にひたり感傷的になる。涙の卒業式、それがママの心の風景でした。

しかしハワイでは、まるで逆でとても明るい。生徒もみんな違った考えを持ち、目的意識も強い。ここの卒業式は「別れ」というより、「時の節目」のような印象を受けました。それは終わりではなくて「新たな出発」へと子供達を送り出す時だと知り、ママは本当に感動しました。

いよいよ新しいスタート。小夏にはあなたらしい人生を歩んでほしい。決してママを喜ばせようという思いで進路を決めないでね。自分のしたい事、好きな事、夢中になれるものを見つけてください。「簡単な道と難しい道があったら、難しい道を選ぶといいよ」とパパも言っていたよ。「すべてが益となるから…。」そして、小夏が尊敬できるボーイフレンドに出逢い、将来の良き伴侶を見つけてほしい。女性は愛する人の子供を授かるのが一番の幸せだと、ママは思うよ。

 

「求めなさい。そうすれば与えられます。捜しなさい。そうすれば見つかります。たたきなさい。そうすれば開かれます。」(マタイの福音書七章七節)

 

いつも神さまにいつもお祈りして道を歩んでください。Life~小夏らしく喜びをもって生きることこそ、本当の親孝行だよ。小夏卒業おめでとう。

寛子より」

 

飯島寛子(いいじま・ひろこ)

世界の第一線で活躍したプロ・ウィンドサーファー飯島夏樹さんと結婚。4 人の子ど もを授かったが、夫は肝臓ガンのため2005 年に召天。 夏樹さんが病床で書き遺した『天国で君に逢えたら』(新潮社)など3 冊の著 書は大きな反響を呼び、映画化された。寛子さんも、自身と家族の“それから” を『Life パパは心の中にいる』(同)に綴っている。現在ハワイで、愛する人 を亡くした方をサポートする自助グループのNPO 法人HUG Hawaii や、 ハワイ散骨クルーズBlue Heaven, Inc. の働きに携わる一方、エッセイスト、 ラジオのDJ として活躍。 担当番組「Wiki Wiki Hawaii」が、毎週日曜日の 朝5時からインターFM で放送されている。マキキ聖城キリスト教会会員。
 

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