《聖書バトルvol.10》突如寝返り攻守逆転

ラファエロ・サンティ作「アテネでのパウロの説教」

ユダヤ人のエリートにして、ローマ市民という特権をもった男は、なぜ回心したのか。

 パウロは、厳格な教育を受けたエリートの律法学者で、イエスの死と復活を宣べ伝えるイエスの弟子たちを激しく迫害していました。
 それは、イエスを「救い主を騙る不遜な罪人」と見なしていた正義感から出た行為でした。イエスを神と信じる者なら誰でも殺そうとしていたパウロは、家柄もよく行動力もあり、非常に熱心でしたから、ユダヤ教徒の星のような存在だったことでしょう。
 ところがある日、クリスチャンたちを捕らえにいく途上で、パウロは光に包まれ、「なぜわたしを迫害するのか。わたしはあなたが迫害しているイエスである」という声を聞きます。その真実を、神自身から告げられたショックはどれほどのものだったことでしょう。
 パウロはそこから、180度の方向変換をしました。これまでキリスト教徒迫害にかけていたエネルギーにも勝る情熱をもって、イエス・キリストは神だと説いて回り始めたのです。
 これにはユダヤ教徒たちもあわてました。今までユダヤ教徒代表のようなポジションで、キリスト教会撲滅のために大活躍していたパウロが、自らの体験をもとに、イエス・キリストこそ救い主であり神であると語り始めたら、その影響力たるや量り知れません。事実、多くのユダヤ人がパウロの話を聞いてキリスト教に改宗してしまったのです。
 ユダヤ教の指導者たちは、パウロの口を封じようと彼をつけ狙い始めました。迫害する側からされる側になったパウロは、「むちで打たれたことが3度、石で打たれたことが1度」あったと言っています。またあるときは、パウロを殺そうと企むユダヤ人たちの陰謀が、あわやのところでパウロ側の耳に入り、パウロの弟子たちが彼をかごに入れ、ユダヤ教徒の見張りの目を盗んでこっそりと城壁から吊り下ろして逃がしたこともありました。
 パウロは新約聖書の多くの部分を執筆し、キリスト教の教義をまとめました。     《使徒8~28章》

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