《聖書バトルvol.9》1人は教父に、1人は骸に

ファン・ファネス作「最後の晩餐」

イエス側近の十二弟子。ペテロとユダは対象的な存在だった。

 12弟子の1人、イスカリオテのユダは、「裏切り者」で有名です。けれども、イエスを裏切った弟子はユダだけではありません。12弟子筆頭格のペテロも、イエスが逮捕されると、「そんな人は知らない」と関係を否定して逃げてしまった「裏切り者」です。
 しかし、2人の「裏切り者」のその後は対照的でした。ペテロは後に、キリスト教会の中心人物の1人となり、ユダは首をくくって死んでしまいます。その違いはいったいどこから生じたのでしょうか。
 まず、一概に「裏切り」と言っても、ユダとペテロのそれとは、質的にまったく違うものでした。イエスを歓迎した民衆は、イエスがこの世の王になって民族の独立を実現してほしいと願っていました。ユダも同じ思いだったでしょうから、一向に武装蜂起しないイエスにいらだちを感じたことは想像できます。また、彼は弟子たちの中で会計係をしていましたが、そこからいつも着服していたという記述もあり、金銭に対する執着の強さもうかがえます。
 一方ペテロは、どこまでもイエスに従いたいという真心からの願いをもっていましたが、イエスを捕らえに来た権力者たちが武装しているのを見ると、恐怖に負けて思わず逃げてしまいました。それでもイエスが心配で、こっそり後をつけていったのですが、その姿を見とがめられ、「おまえもイエスの仲間だろう」と言われると、必死でそれを否定しました。
 そんなふうでしたから、ペテロは弱い自分に打ちひしがれたのですが、イエスを心の外に追い出すことはできませんでした。十字架から復活したイエスは、そんなペテロの前に現れ、その心の傷を癒やしました。それからのペテロは別人のように、死をも恐れぬ勇敢な指導者となって教会を築いていくのです。
 一方ユダも、イエスを売った代金を手にしたあとで激しく後悔しました。しかしイエスと正面から向き合うことをしなかった彼は、絶望にまかせて自殺してしまうのです。《マタイ26章/マルコ14章/ヨハネ21章》

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