ニッポンの大都市・東京で聖書の言葉探訪!
日本の中で、クリスチャンは総人口の0・8%程度。それでも、日本一の大都市・東京の中には、教会以外にも聖書由来のものが随所に見られます。
JR田町駅近くのビルの敷地に、1つの記念碑が残されています。都の旧跡「元和キリシタン遺跡」です。記念碑の下には旧東海道が通り、この近くにはかつて大木戸と呼ばれる江戸の表玄関がありました。人通りも多いこの場所で、1623(元和9)年、50人ものキリシタンが一度に十字架にかけられ、処刑されたのです。それは、江戸の人々に強烈な大事件として映ったことでしょう。
上野の森には、聖書を読んでいた西郷隆盛の像があるほか、東京国立博物館には、江戸時代に長崎奉行所が没収したキリシタン関連遺物が数多く収蔵されています。毎年1~2か月ほどそのコレクションをベースにした企画展が開かれています(ここ数年は、夏から秋にかけてが多い)。マリヤ像、十字架のほか、踏み絵もあり、多くの人に踏まれて摩耗した絵が、歴史のリアリティーを感じさせます。
東京都心の日比谷公園の森の中には、聖書の言葉が刻まれた鐘があります。アメリカ独立を記念した「リバティ・ベル」を模したもので、第2次大戦後、日本占領が終結した1952(昭和27)年に、占領軍総司令官マッカーサーの発案で日本に贈られたものです。鐘には「国中のすべての住民に解放を宣言する」《レビ記25・10》とあります。
六本木のアークヒルズ・サントリーホール玄関前にある広場の一角に噴水があります。それを囲む壁には、ひっそりと聖書の文字が刻まれています。「然のみならず患難をも喜ぶ、そは患難は忍耐を生じ、忍耐は練達を生じ、練達は希望を生ずと知ればなり」《ローマ5・3~4/文語訳》。東京を中心に数多くのビル開発を手掛ける森ビルの創業者・森泰吉郎氏がクリスチャンだったことから、ここに生涯愛した聖句を刻みました。
このほか、東京にはキリスト教主義の学校が数多くあり、現在の日本の私学全体の20%を占めています。日本のキリスト教人口が1%とすれば、その20倍以上の割合であり、明治維新以降の近代化を担う人材育成にも貢献してきたのです。
日本で聖書を信じた人々はわずかながら、時代の中で時折、大きなインパクトを与えてきました。東京の中だけを見ても、さまざまな痕跡が見られるのです。
聖書ガイドMOOK リアル聖書入門 第一部 8-9頁より