ホセア:愛と裏切りを体現 北イスラエルの滅亡を預言
ホセアは、ことばだけではなく、自分の結婚生活を通して神の預言を伝えたという点で、異色の預言者です。神はホセアに、姦淫の女ゴメルをめとり、彼女が産む姦淫の子らを引き取れと、何とも奇妙なことを命じました。ホセアは言われたとおりにしますが、ゴメルはあるとき、ホセアのもとを出て行ってしまいます。おそらく、身を持ち崩して奴隷になったか、別の男性の愛人になったのでしょう。しかし神は、「夫に愛されていながら姦通している女を愛しなさい」(ホセア3・1)と重ねて命じたので、ホセアは代金を支払って彼女を買い戻しました。
実はこれは、神に愛され、守られ、養われながら他の国の偶像を慕って神を捨てたイスラエルと、それでもイスラエルを愛する神の姿を現しているのです。北王国はアッシリアに滅ぼされ、南王国はバビロンに滅ぼされるというさばきを受けますが、神の愛はそこで終わってしまったのではなく、イスラエルは再び集められ、悔い改める者には喜んで赦しが与えられるということが、このホセア書を通しても語られています。
愛する者、尽くした者に裏切られ、愛を返してもらえない痛み、悲しみ、怒りを、妻に裏切られた夫のそれに重ねて語りつつ、それでも、「イスラエルよ。どうしてあなたを見捨てることができるだろうか。……わたしの心はわたしのうちで沸き返り、わたしはあわれみで胸が熱くなっている」(同11・8)、「わたしは彼らの背信を癒やし、喜びをもって彼らを愛する」(同14・4)と語る神の激情とさえ言える愛が、このホセア書のテーマなのです。
異邦人宣教への預言者
新約聖書の時代に異邦人への伝道を展開した使徒パウロは、ホセアの預言を、神の愛がユダヤ人のみではなく、異邦人へも注がれていることの根拠の1つに挙げています。
「このあわれみの器として、神は私たちを、ユダヤ人の中からだけでなく、異邦人の中からも召してくださったのです。それは、ホセアの書でも神が言っておられるとおりです。『わたしは、わたしの民でない者をわたしの民と呼び、愛されない者を愛される者と呼ぶ。あなたがたはわたしの民ではない、と言われたその場所で、彼らは生ける神の子らと呼ばれる』」(ローマ9・24~26)