マリヤはできちゃった婚だった!?
イエス・キリストの母として知られるマリヤがイエスを身ごもったのは、大工のヨセフとの婚約期間中のことでした。
ある日、マリヤのもとに天使が訪れ、マリヤがイスラエルを治める「いと高き方の子」を産むことになると告げます。マリヤは処女である自分が子どもを産むなどということがどうして起こり得るだろうかと尋ねますが、それは聖霊によるもので通常の妊娠とはまったく違うものであると教えられると「お言葉どおりこの身になりますように」と、神の計画に身をゆだねる意思を明確に表明します。
マリヤは自分の身に起こったことを「どの時代の人々も、私をしあわせ者と思うでしょう」と喜び、神をたたえますが、実はこれは命懸けの大変な使命を授かったということでもありました。
今の日本には「できちゃった婚」という言葉が広く浸透し、結婚前の妊娠を許容する風潮も強くなってきていますが、当時のユダヤ社会では、結婚前に妊娠するようなことがあれば姦淫の罪と見なされ、民衆によって死ぬまで石を投げつけられる「石打ちの刑」に処せられるのが常でした。だからこそヨセフはマリヤをこっそりと自分のもとから去らせようとしたのですが、彼のもとにも御使いが現れ、その妊娠は聖霊によるものであるから、安心してマリヤを妻として迎えるようにと告げます。マリヤと同様にヨセフも、その言葉を受け入れ、従いました。
こうしてマリヤがイエスを身ごもっている間に、ローマ皇帝から、民は皆、自分の出生地に戻って住民登録をせよとの勅令が出たため、ヨセフはマリヤを連れて自分の故郷ベツレヘムへと向かいます。同じ目的でベツレヘムに戻って来ていた人々がたくさんいたため、宿屋はどこも満室で、マリヤは家畜小屋でイエスを産みました。
イエスの母として、マリヤは自分には理解できないことをたくさん経験しました。イエスの誕生時に、救い主の誕生を喜び祝う訪問客が現れたこと、少年時代のイエスが神殿で学者を相手に対等に話し合っていたこと、後には、イエスが起こすさまざまな奇跡、そして十字架での死。これらのことをマリヤは、すべて理解できないまでも心に留めて、信仰をもって受け止めていました。
カトリックの教会では聖母マリヤとして信仰の対象にもなっていますが、プロテスタントの教会では、神の計画にどこまでも信頼し、すべてを受け入れて従ったひとりの信仰者として大きな尊敬を集めています。
聖書ガイドMOOK リアル聖書入門 第二部 62-63頁より