世界三大宗教比較図
世界3大宗教とは一般に、キリスト教、イスラム教、仏教の3つを指しますが、その定義は意外にも信徒の数が多い宗教トップ3ではありません。数だけで言えば、キリスト教、イスラム教、ヒンズー教の順になりますが、ヒンズー教徒はほとんどがインド周辺に集中しているため、3大宗教には数えられていません。
つまり3大宗教とは、地理的・民族的な壁を越え、世界中に広まり、その社会と文化に大きな影響を与えている3つの宗教ということになります。ここでは、その3つの宗教の歴史と、ごく基本的な内容を見ていきたいと思います。
仏教:仏教の開祖である「お釈迦様」の釈迦とは、実は北部インド(現ネパール)の、ある部族の名前です。
紀元前5世紀頃、この釈迦族にゴータマ・シッダールタという王子が生まれました。シッダールタは16歳で結婚し、1児をもうけましたが、人生の意義について悩むようになり、29歳のときに出家しました。2人の師のもとで修行をした後、ひとりで山林にこもって6年間苦行をしましたが、「苦行では悟りを得られない」という結論に至りました。
その後、乳粥で体力を回復したシッダールタは菩提樹の下で悟りを開きました。「ブッダ」とは「悟れる者」という意味ですから、シッダールタがブッダになったのはこのときだといえます。
ブッダの主な教えは諸行無常(この世に変わらないものはない)、諸法無我(物事にはすべて原因と条件〈因縁〉がある)、涅槃寂静(執着心を捨てれば訪れる静かな境地)の3つで、三法印といわれています。
キリスト教:旧約聖書には、神に背き罪を犯した人類のために、その罪を贖う救い主が現れるという預言があります。そして今から約2000年前に、イスラエルのユダ族の子孫としてベツレヘムで生まれたイエス・キリストが、自分がその救い主であることを宣言しました。
この「キリスト」とは「救い主」という意味で、ヘブル語では「メシヤ」になります。つまり、イエス・キリストとは、名前と苗字ではなく(この時代、苗字はありませんでした)、救い主イエス、という意味なのです。
イエスは30歳から教えを説き始め、さまざまな奇跡を行い、33歳のときに人類の罪の身代わりのために十字架上で死に、3日目によみがえりました。新約聖書には、このイエスとその弟子たちの言行録が記されています。
ちなみに、旧約聖書を信じているところまではユダヤ教もキリスト教と同じですが、ユダヤ教ではイエスを救い主とは認めず、メシヤはこれから現れるものと考えています。したがって、新約聖書は教典として認めていません。
イスラム教:キリスト教、ユダヤ教と同じく、イスラム教も旧約聖書とそこに記されている唯一神を信じています。この唯一神をアラブ語では「アッラー」といいます。
イスラム教の開祖は、570年にメッカに生まれたムハンマドです。ムハンマドは、裕福な未亡人が経営する交易会社で働いていましたが、その働きぶりを買われて、経営者である未亡人と結婚することになりました。
暮らしにゆとりが生まれたムハンマドはしばしば瞑想にふけるようになり、やがて40歳のときに御使いガブリエルを通して神の啓示を受けたとされ、その後伝道活動に入りました。それから63歳で病没するまでの23年間の間に受けた「神の啓示」を書いたものがコーランです。
コーランには、アッラー以外に神はいないということと、この信仰にあずかる者が、それをどのように表明すべきかについて具体的に述べられています。
イスラム教の中で最も大切な聖典はコーランで、その次がムハンマドの言行録であるハディースです。他に、コーランを正しく理解するためのものとして旧約聖書全体と、新約聖書の福音書も教典として認められています。
そのほか、日本国内で大きな影響力を持つ宗教としては神道があります。神道には、先に紹介した3大宗教のような体系だった教理や教典はなく、日本民族が自然に持っていた神概念に基づいて自然発生的に生まれた宗教だといえます。
先祖を祭り、災いをもたらす怨霊をなだめるための祭事を行い、日本人の生活・風俗に深く浸透してきました。日本には、さまざまな自然現象や自然物を擬神化したり、偉人を神格化する文化があり、神道はその媒体となりました。戦時中に「軍神」と呼ばれた東郷平八郎を祭る東郷神社、明治天皇を祭る明治神宮、そして戦没者を祭る靖国神社などもその一例です。
聖書ガイドMOOK リアル聖書入門 第一部 10-13頁より
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