士師:外敵から国を守る 国の危機に現れた12人の指導者

士師記はイスラエルの「暗黒時代」とも言うべきすさんだ時代を描いています。ヨシュアの死後、イスラエルの民は再び神に背き、カナンの偶像を拝むようになりました。そのため、神は懲らしめとして近隣諸国にイスラエルを略奪させて苦しめました。
イスラエルの民は、苦しくなると自分たちの神を思い出して助けを求めます。神はそのつど、「さばきつかさ=士師」と呼ばれる指導者を起こしてイスラエルを救い出しますが、士師が死ぬと、民はまた偶像を拝み始め、近隣諸国に攻め入られ、あわてて神に助けを求めるという繰り返しでした。
ヨシュアが死んでから、サムエルという偉大な預言者が生まれるまでの約200年間に、12人の士師が起こされましたが、彼らは必ずしも模範とするべきリーダーたちではありませんでした。それでも、これらの士師は神のことばに聞き従い、民も結束し、他国からの侵略という苦境を乗り越えてきたのです。
士師たちの言動に首をかしげたくなるような記述も少なくないのですが、士師記の巻末にある「そのころ、イスラエルには王がなく、それぞれが自分の目に良いと見えることを行っていた」(士師記21・25)ということばを読むと、その理由もわかるような気がします。
ここでは、12人の士師のうち、有名な3名を選んで紹介しましょう。

デボラ

唯一、女性の士師であり、神との関係が良好なすばらしい指導者だったと言えます。彼女はいつも、なつめやしの木の下に座っていて、民がそこに来てはいろいろと相談をし、適切なアドバイスを受けていました。
彼女が士師だった時代、イスラエルはカナンの王ヤビンからの圧迫に苦しんでいましたが、デボラは勝利を預言し、カナンの将軍シセラが、1人の女性の手によってあっさりと殺されてしまったことを機に、イスラエルはヤビンを絶ち滅ぼします。

ギデオン

「臆病な勇士」として有名な士師が、このギデオンです。彼の時代、イスラエルはミディアン人に苦しめられており、ギデオンも、ミディアン人を恐れて酒ぶねの中に隠れて脱穀作業をしているときに御使い(天使)が現れました。御使いに、「ミディアン人からイスラエル人を救え」と言われたギデオンは、自分の属する分団は一族の中で最も弱く、その中でも自分は最年少だと弱音を吐きます。しかし神が、「わたしはあなたとともにいる。あなたは一人を討つようにミディアン人を討つ」(同6・16)と励ますと、ギデオンは、神にそのしるしとして、超自然的な現象を起こして見せてくれるように求めます。神がそれに応じたので、ギデオンは意を決して立ち上がりました。
やがて、ギデオンが民を率いてミディアンに攻め入ろうとしたとき、神は、イスラエルの民の数が多すぎるから減らすように指示をしました。実はもともと、13万5千人のミディアン兵に対し、イスラエルは3万2千人と、圧倒的に少なかったにもかかわらず、神はそれをさらに300人まで減らしてしまったのです。それはミディアン兵に勝利を収めたこの戦いが、神の力によるものであることを明らかにするためでした。
ギデオンは、その後、40年間イスラエルを治めました。イスラエルの民は、ギデオンを勇者としてたたえ、その息子たちが国を治めるように懇願しましたが、ギデオンは、自分は勇者ではないと言い、神に信頼するように説いて固辞しました。

サムソン

「サムソンとデリラ」と言えば、オペラや映画にもなり、どこかでその名前を聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。サムソンは、まだ母の胎内にいるときに御使いが現れ、「生まれてくる子どもはイスラエルをペリシテ人の手から救う者になる。その子の髪の毛を切ってはならない。また、ぶどうの木からできる物はいっさい食べてはならない」という指示を与えます。
サムソンの両親はその言いつけを守り、サムソンは1度も髪の毛を切ったことがないまま成長し、やがて人並みはずれた怪力の男になりました。ところがこのサムソンは、敵であるペリシテ人の女性に恋をし、強引に結婚したあげく、多くの死者が出るトラブルを起こしたり、ペリシテ人とイスラエル人の緊張関係を高めるようなことを平気でしていました。
1度目の結婚が悲惨な結果に終わったあと、サムソンが夢中になったのは、またもやペリシテ人の女性、デリラでした。当然といえば当然ですが、ペリシテ人たちは、サムソンを殺すためにデリラを利用し、彼女に、サムソンの怪力の秘密を聞き出すようにそそのかしたのです。デリラもためらうことなく、このスパイの役を引き受けました。
秘密を聞き出そうとするデリラに対して、サムソンは最初はのらりくらりとでたらめを言ってかわしていましたが、しつこく毎日責め立てられることに疲れ果て、ついに、「生まれてから1度もそったことのない髪をそりおとしたら、自分の力は消えてしまう」と本当のことを話してしまうのです。
デリラはすかさず、サムソンが眠っている間にその髪の毛をそり落としてしまいました。そこに知らせを受けたペリシテ人たちがやってきて、怪力を失った彼を捕らえ、両目をえぐり出し、鎖をかけて牢につないでしまいました。
サムソンは、さらしものとしてペリシテ人の宴会の席に連れ出されたとき、「もう1度だけ力を与えてください」と神に祈ると、右手と左手で1本ずつ柱を抱え、それを引き寄せて折り、自分たちの上に天井を落として復讐を遂げました。彼の最期について聖書では「サムソンが死ぬときに殺した者は、彼が生きている間に殺した者よりも多かった」(同16・30)と記しています。

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