ハワイからの手紙 やさしい風に吹かれて-25 Happy Mother’s Day〜母親は偉大なり〜
「マクアヒネ」これはハワイ語で「母親」を意味する言葉です。ここハワイにおいても母親の存在は他の何ものにも変えられないほど偉大なものです。「このママがいたから、今のこの子があるのだね!」という会話をよく耳にします。私にも実母と義母の二人の母親が与えられています。いずれも個性豊かな性格で、現在の私に多大な影響を及ぼしたことは言うまでもありません。
さて、私がここハワイで出逢った中で、女性として母親として尊敬する方がいます。それは料理研究家の山本テリーさんです。テリーさんは今年で八四才、今でも厨房を駆け回って、若いママたちにお料理を教えておられます。もともと若い頃、学校の教師をしていたこともあり、教えることには秀でておられます。献立もレシピもすべて筆書き。煮しめを作らせたら、高級お惣菜店にでも並ぶほどの腕前。それは年一度、私の所属する教会のバザーでの目玉商品で、すぐに完売してしまうほどのものです。
テリーさんの魅力はお料理だけではありません。彼女はさまざまな人生苦を通られ、その中で見いだした教訓を具体的に言葉にして、私たちに伝えてくれます。亡き夫・夏樹の闘病中も、ご主人をガンで亡くした経験からテリーさんは慰めと励ましの言葉をくださいました。私が未亡人となった後も、ご自身の経験から子育てにおける注意点を分かち合ってくださいました。「未亡人となってすぐには、異性に気をつけなさい!」、「娘は母親に厳しく、言う事を聞かなくなるからね。注意しなさい!」、「毎日の子供たちの食事はとても大切だからしっかりとやらなきゃダメよ!」など。そして簡単で美味しい料理のレシピも教えてくれました。本当に驚くほどにタイムリーなことばかりでした。そのご恩は決して忘れることはできません。
彼女は力と気品を身につけ、ほほえみながら後の日を待つ。 彼女は口を開いて知恵深く語り、その舌には恵みのおしえがある。(箴言三十一章二十五、二十六)
この山本テリーさんは、実は全米で最も著名なシェフのお一人であられるアラン・ウォンさんの実母なのです。私は一度ラジオのお仕事でアランさんとご一緒しました。彼はとても真摯で、礼儀正しく、笑顔の素敵な方でした。そのお料理も、日本人の母親に育てられたというような、きめ細やかなオリエンタルなお味。それらはとても創造力豊かで意外性に富んでいます。このアランさんに最も大きな影響を及ぼしたのは、偉大なるマクアヒネ・山本テリーさんなのです。
「子供たちに最も大切な事として何を教えましたか?」と質問したところ、テリーさんはこう答えました。「ありがとう。ごめんなさい。嘘はいけない」と教えましたと。「母の愛とはどのような愛ですか?」と問うたところ、彼女は最後にこう答えました。「母の愛は決して溺愛であってはいけない。子供を愛しているからこそ、しつけには厳しくするのよ。それが本当に子供を思う愛だから…」。その言葉に思わず心打たれました。ハワイのママへ、覚えの悪い私ですが、これからもどうぞ優しくご指導下さいませ。