世界中の言語で訳されてきた聖書がずらり
多くの人が命をかけ、人生をかけて翻訳してきた本
「聖書」は英語でthe Bible のほかに、the Book, Book of Booksなどといい、それは本の中の本という意味です。
確かに聖書は、そう呼ばれるにふさわしい特別な本です。まず、その歴史をたどれば、聖書に書かれている内容の一部は、文字が発明される前の先史時代に、人の口から口に口頭伝承で伝えられたものでした。文字ができると、石に刻まれたり、葦で作ったパピルス紙や、羊皮紙に書かれるようになります。
印刷技術が発明されるまでは、写字生と呼ばれる専門家が膨大な時間と労力を費やして、驚くほど緻密に聖書を1巻ずつ書き写しました。そうやって書き写された聖書のことを写本といいます。
1947年にイスラエルの死海の近くで発見された死海写本は、それ以前に発見されていた写本より約1000年古いものでしたが、この2つの写本がほとんど同一だったことから、写字生たちの仕事の驚くべき正確さが証明されました。
中世になると、1450年にヨハネス・グーテンベルクが印刷技術を発明し、1456年に初めて完全な本としてラテン語の聖書を印刷しました。これが、世に名高い「グーテンベルク聖書」です。
この時代、キリスト教会の上層部は社会の権力者でした。聖書の教えではないことを、さも聖書の教えであるかのように偽っていた彼らは、大衆が自分で聖書を読むことを嫌い、大衆にわかる言語に聖書を翻訳することを固く禁じました。しかし、そんな権力者たちに命をねらわれつつもドイツ語や英語などに訳した翻訳者たちのおかげで、聖書は世界中の言語に訳されていったのです。
この翻訳事業は現在でも続いています。世界には今、文字を持たない少数民族の言語も含めると6500以上の言語がありますが、2012年にはそのうちの2551の言語に聖書が翻訳されました(日本聖書協会ホームページ参照)。文字を持たない民族に聖書を伝えるために、その民族の言葉を研究し文字を作るところから翻訳を始める人々の努力が今も続いているのです。
大昔から、数えきれないほどの人々が命や人生を懸けて人に伝えようとしてきた本、それが聖書なのです。
聖書ガイドMOOK リアル聖書入門 第一部 6-7頁より