イスラエルは国名にして国名にあらず

14_イスラエルへの帰還民イスラエルとは、1948年にパレスチナに建国されたユダヤ人の国家です。紀元前1世紀に国を失ったユダヤ人が自分たちの国を持つのは、実に2000年ぶりのことでした。
現在は国名となっている「イスラエル」は、もともとは人名でした。神に「わたしはあなたを大いなる国民とし……地上のすべての民族は、あなたによって祝福される」《創世記12・2〜3》と約束され、キリスト教の中では「信仰の父」と呼ばれるアブラハムの孫、ヤコブに神から与えられた別名がイスラエルだったのです。
ヤコブの12人の息子たちがそれぞれ族長となり、その子孫たちがイスラエル12部族と呼ばれるようになりました。ちなみに、イエス・キリストはこの12部族のうちの1つであるユダ族の子孫として生まれます。
イスラエルはやがて大きな国家へと発展していきますが、アブラハムに与えられたあの約束にちなんで、聖書の中では、国家というより、「神に選ばれ、祝福された民。神と契約を結んだ民」の呼び名としてイスラエルという名が用いられています。
しかしイスラエルはダビデ王朝の最盛期を過ぎると次第に神に背くことが多くなり、国家としても周囲の列強国に侵略されて衰退し、ついには国土を失ってしまいます。
ユダヤ人はその後、つい70年ほど前にイスラエルが建国されるまで2000年もの間、国を持たない民族として世界中に散らばって暮らしていたのです。
その間、ユダヤ人はさまざまな迫害を受け、近代史の中で最も大規模なものがナチス・ドイツによるホロコーストです。殺されたユダヤ人は600万人にも及ぶと言われていますが、そのような大虐殺を経てもユダヤ人が完全に滅んでしまうことはありませんでした。
また、そのような迫害や虐殺がなかったとしても、国土を失った民族が2000年もの長きにわたってそのアイデンティティーを保ち続けること自体、奇跡だといわれています。移民でも、大体3世代目あたりから母国語を話せなくなり、住んでいる国に同化していくことが一般的だからです。
ユダヤ人には神から与えられた律法があり、生活全般に関するこまごまとした規則や礼拝に関する規定が書かれている聖書を持っていたことが、国土もないのに何世紀にもわたってユダヤ人としての自覚を保ち続けることを助けるうえで大きな要因となったと考えられます。

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