ザアカイ:嫌われ者の取税人 イエスに出会って変えられた人生

すでに学んだように、イエスの時代、ユダヤはローマの支配下にあり、ローマに税金を納めなければならない立場でした。その税を集める仕事をしていた取税人たちは、ユダヤ人でありながらローマのために働く裏切り者のような存在でもありましたし、ローマの威を借りて余分に税金を集めては着服するという不正も横行していたため、ユダヤの中で非常に嫌われていました。
エリコの町に住んでいたザアカイは、その取税人のかしらでした。「金持ちであった」(ルカ19・2)、と書いてありますが、彼の裕福さと人から忌み嫌われる度合いは比例していたかもしれません。
あるとき、イエスがエリコにやってきました。その卓越した説教や奇跡で話題になっていたイエスを一目見ようと多くの人々が詰めかけており、背の低いザアカイは人垣に遮られて前に出ることができませんでした。それでも諦められなかった彼は、なんと近くのいちじく桑の木に登ってまで、イエスを見ようとしました。
すると、驚いたことにイエスがその木の下に来て上を見上げ、「ザアカイ、急いで降りて来なさい。わたしは今日、あなたの家に泊まることにしているから」(同5節)と言ったのです。それを聞いた人々は、「ローマの犬」のような取税人に目を留め、声をかけたイエスを小声で非難しました。
しかしザアカイは、イエスが、教えた覚えのない自分の名を呼んで「あなたの家に泊まる」と言ったのを聞いて、何か心に感じるものがあったのでしょう。急いで木から降り、イエスのもとにくると「主よ、……私は財産の半分を貧しい人たちに施します。だれかから脅し取った物があれば、四倍にして返します」(同8節)と申し出ました。
もともと、ザアカイが何としてでもイエスを見たいと思った理由は、金銭しかよりどころも楽しみもない生活に満ち足りない思いをもっていて、近頃うわさになっているイエスという人物に、自分に欠けているものを満たしてくれる何かがあるかもしれないと感じていたからという可能性もあります。いずれにしても、彼は自分の名前を呼ばれ、「今日、あなたの家に泊まる」と言われた瞬間に、劇的に変わってしまったのです。
ザアカイの変貌ぶりに対して、イエスは「今日、救いがこの家に来ました。……人の子(人となった神の子イエスのこと)は、失われた者を捜して救うために来たのです」(同9~10節)と宣言しました。

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