ハワイからの手紙 やさしい風に吹かれて-13 レイ 〜アロハの贈り物〜
五月一日は「メーデー(May Day)」と呼ばれ、世界中では労働者の祭典の日とされています。しかし、ここハワイではこの日を「レイ・デー(Lei Day)」と呼び、古代ハワイから受け継がれてきた「花の首飾り(Lei/レイ)」を身につけ、ハワイの伝統や文化を讃える日と定められています。ハワイ州各地で様々な祭典が行われますが、特にホノルル市にあるカピオラニ公園で行われるイベント「レイ・デー・セレブレーション」は盛大なものです。レイのコンテストも開催され、美しい花々と人々の温かい思いに包まれる時を過ごすことができます。
また、レイ・デーに地元の小学校などでは特別なプログラムが企画され、子供達が伝統文化のハワイアン・フラとハワイアン・ソングを披露します。私の子供達がまだ小学生だった頃、そのレイ・デー・プログラムを初めて経験しました。毎年一つのテーマが掲げられ、それに沿って踊りや歌が選ばれます。神への賛美、自然の恵みへの称賛、そして人々への愛が表現され、その場はとても崇高な趣となります。子供たちは学年別にレイを身につけ、それぞれ明るい笑顔で演じるのです。長女の小夏がハワイアン・フラを踊っている姿を見た時、私は感動のあまり涙しました。レイを身につけるということは、ハワイの伝統文化のスピリットそのものなのです。
そして、ハワイではそのレイに感謝の気持ちやお祝いの思いを込めて贈る習慣があります。結婚式、誕生日、卒業式、記念日、葬儀など、愛する者にレイを手渡すのです。また、日本からの友人を出迎える際、私はレイを持って空港に行きます。アロハの心でその方を歓迎するためです。美しくも可憐な花の首飾りをかけられる時、不思議と人は長旅の疲れも癒され、その人がもつ最高の微笑みが表れ出るのです。レイは人と人を結び合わせ、まるでハワイを中心に喜びと感謝の輪が広がっていく。そのような親愛の輪を象徴しているようです。
「いつも喜んでいなさい。 絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって神があなたがたに望んでおられることです。」(第一テサロニケへの手紙五・一六~一八)
感謝を表すことの大切さを私はここハワイで学びました。最も寂しくて悲しい時、「大いなる方に(Give Thanks)」という曲を、私は何ども歌っていました。すると、心の嘆きや悲しみがいつしか感謝の言葉によって消えていきました。そして、「わたしは…あなたがたとともにいます」(マタイ二八・二0)という聖書の言葉が、喪失で気力をなくしていた私を引き上げ、回復へと導いてくれました。レイを手にする度に、その経験を想い起します。
悲しみの声を喜びに、悩みの声を祈りに、不満の声を感謝の言葉に変えることができるお方を、聖書は神と呼んでいます。そのように変えられた人の心に本当のアロハの精神が宿り、その人が贈るレイが命(マナ)を与えるのです。ここハワイを訪れる方々にぜひ知ってほしい伝統の恵みです。