ハワイからの手紙 やさしい風に吹かれて-29 料理は人を幸せにするもの

幼い頃の想い出の一つに、料理作りのお手伝いをしていたことがあります。四歳年上の私の姉は、中学校の頃から食に強い関心を持っていました。あのNHK「きょうの料理」のレシピ本を熟読し、そこからわが家の献立を考え料理を作っていました。姉はたいへんな凝り性で、シュウマイひとつを作るのに立派な蒸篭を買うところから始めてしまうほどでした。特に特別なおもてなし料理に関心があり、玄人向きの豪華な膳を作ることが彼女の趣味でした。その勢いで後に姉は管理栄養士の資格までとってしまいました。そんなパワフルな姉の助手となって学んだことは、ひと手間をかけることの大切さでした。

その反対に私は平凡で・庶民的で・簡単なおかずに興味がありました。みんなが大好きな家庭の味と呼ばれるものです。その頃の私の得意料理は「牛肉とピーマンの炒め物」と「茶碗蒸し」でした。私はなるべく費用を安くあげるようにと、ざっくりですが家計簿を見て、頭の中で計算し、祖母も食べることができるメニューを考えていました。母子家庭で母が夜遅くまで仕事をしていて家にほとんどいなかったため、私は姉と交互に夕食を作っていたのです。「これは凄い!」と料理の味を褒められるのは姉であり、「偉いねー!」とがんばりを褒められたのが私でした。そんな私たち姉妹の個性は今も変わっていません。

食について思い巡らす際、いつも心に留めている方がいます。それは私が尊敬する女性で、ラジオの仕事でお会いした事のある料理研究家の「栗原はるみ」さんです。栗原さんは料理の力を信じ、家族のためこの一事に心を注いで取り組んでおられる方です。ある番組で「普通の暮らしこそが何よりの幸せ」と語っておられました。その日々の食卓を大切にするという思いに、私は深く共感しています。美味しいご飯が待っている家には誰もが帰りたくなるもの。「ママ、今日の夕食は何?」と夫や子供が目を輝かせている時、家庭の中に幸いが生じるのだと、栗原さんの言葉から教えられました。

こういうわけで、あなたがたは、食べるにも、飲むにも、何をするにも、ただ神の栄光を現すためにしなさい。(コリント人への第一の手紙十章三一節)

ここハワイでは日本のお弁当にも似た「プレートランチ」と呼ばれる文化があります。一枚のお皿に一食分の食事を盛りつけるというスタイルのものです。庶民派の私は簡単に食事が済ませられるこのプレートランチスタイルを気に入っています。その代表的なおかずには、ロコモコ・てりやきチキン・もち粉チキン・ガーリックシュリンプ・ガーリックマヒマヒなどがあります。私のお勧めの店はダイアモンドヘッド麓のモンサラット通りにある「パイオニア・サルーン」で、ガーリックアヒステーキが絶品です。
料理人が真心を込めて作る一皿の料理が、それをいただくものの幸いとなり笑顔となる。
どちらもそのような小さなことの積み重ねが人の幸せを形づくっていく。そこに料理の力があると私も信じるものでありたいです。

 

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