ダニエル:王命よりも信仰を 大帝国の未来を預言したダニエル
北イスラエル王国に続き、南ユダ王国も滅ぼされ、人々がバビロンに連れ去られたとき、ダビデやソロモンと同じユダ族の中から、王族、もしくは貴族の少年数人が選ばれて、バビロンの王ネブカドネツァルのもとに連れてこられました。その中の1人のダニエルは、エジプトの宰相になったヨセフと同じように夢を解き明かす能力があり、ネブカドネツァル王の見た夢を通して、バビロン、メド・ペルシア、ギリシア、ローマといった大帝国の興亡について預言をしました。そのため、王はダニエルと、彼の3人の友、シャデラク、メシャク、アベデ・ネゴを高官に抜擢しました。
あるとき、シャデラク、メシャク、アベデ・ネゴは、ネブカドネツァルが制定した「音楽が流れるときはひれ伏して金の像を拝め」という法律を拒否したために王の前に連れ出されて訴えられます。王は怒り狂い、命令に従うならそれでいいが、従わないなら火の中に投げ込む、と脅します。しかし、3人は「そうなれば、私たちが仕える神は、火の燃える炉から私たちを救い出すことができます。……しかし、たとえそうでなくても、王よ、ご承知ください。私たちはあなたの神々には仕えず、あなたが建てた金の像を拝むこともしません」(ダニエル3・17、18)と重ねて拒否しました。
王は激怒して3人を縄で縛って燃える炉の中に投げ込みますが、のぞいてみると、なんと縄を解かれて火の中を歩く3人と、もう1人、神の御使いのような姿をした者が見えたのです。炉から出てきた3人は、衣服も髪の毛も燃えておらず、火のにおいもしなかったため、王は、「ほむべきかな、シャデラク、メシャク、アベデ・ネゴの神。神は御使いを送って、このしもべたちを救い出された。……自分たちの神のほかはどんな神にも仕えず、また拝まないこの者たちを」(同28節)と言ってたたえ、彼らの神を侮る者は厳罰に処すとまで言いました。
ダニエルは、ネブカドネツァルの息子、ベルシャツアル王のためにも夢を解き明かし、敬服した王はダニエルのことを「この国の第3の権力者である」と布告し、次のダレイオス王も、彼に全国を治めさせようと考えました。
ダニエルやシャデラク、メシャク、アベデ・ネゴがバビロンに連れていかれたのは、南ユダ王国が神に反逆して偶像の神々を礼拝し続け、そのさばきとしてバビロンに滅ぼされ、民が捕囚として連れていかれたからでした。けれども、そのような成り行きで外国に連れていかれながら、命を懸けて偶像礼拝を拒み、唯一の神を指し示した人々もいたのだということを、ダニエル書は記しているのです。